HARU (illustrator)

Biography

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春は、東京で生まれ物心が付いた頃から絵を描いたり読書をしたりするのが好きだった。頭の中に浮かんだイメージを画用紙に描くこと、本を読んで情景を思い浮かべることといった、「創造」と「想像」の行為は、彼女にとって非常に開放感を得られる大切なひとときであった。そしてもうひとつお気に入りの過ごし方があった。それは実家のマンションの屋上へひとりで行き、眼下に広がる風景を眺めながら風の音に耳を傾け、風の流れを肌で感じることだった。何者にも縛られない自由な風は、彼女に様々なことを教えてくれる先生であった。風は日によって吹き方も違い、ビニール袋を一瞬で空へ舞い上げたり、優しく木々を揺らしたり、窓を激しくガタガタと鳴らしたりする。彼女は「目には見えなくても存在しているものがある」ということを知った。そして「目には見えない世界にも触れたい」と求めるようになった。日本大学芸術学部へ進学し、4年間文芸を学び、主に小説を書いて想像力・表現力を培った。しかし絵を描くことも同じように好きだったため、2013年より再び制作を始めた。初期はウェブサイト上で発表していたが、ニューヨークのOuchi Galleryや、東京で開催されたグループ展に参加する他、日本のミュージシャンへ作品提供等、徐々に活動の場を広げている。制作はペンで描く手法を主とし、ふとした時に目の前に浮かび上がる景色を見つめ、それらを捉えるように輪郭をなぞる。ペンは気軽に描くことが出来る画材のひとつであり、「ほんの少しのきっかけで世界を変えられる・世界に触れられる」という祈りが込められている。作品には、双子の子供をはじめ、湖の底に住む姫、夜を愛し旅する青年、星を修理する老人、といった様々なキャラクターが登場する。彼らは彼女の分身として描かれており、私たちと同じように日々を営み、喜びや悲しみ、寂しさといった感情を持っている。このようなキャラクターが生まれた理由は、「人と人のつながり」や「見えないもの」、「自身の探求」への憧れを持っているからである。一人っ子であった彼女にとって、特に双子はその思いを強く表すテーマとして描かれている。二人は一見同じような姿ではあるが、性格も心の動き方も違う。私たちは自分自身を見つめるだけではなく、他者の存在によって、自分自身を知ることにもつながるのではないだろうかと、問いかけている。彼女自身の作品に描かれるキャラクターや世界の様子と同じように、一人一人の中にも「何か」がいるのではないかと考えている。姿形・色・時間が違っても、共有できる部分がきっとあるという思いから、無彩色で描く方法を選び、吹く風、多い茂る緑、揺れる花々、瞬く星、流れる時間、命の呼吸、感情を絵の世界でも表現したいと挑んでいる。閉塞感を抱いて幼少期を過ごしたが、イメージを膨らませる喜びや目に見えないものに触れることの素晴らしさを知った彼女自身の体験から、現代の日々で疲弊してしまった人や自分の気持ちを押し込めている人に、想像することの楽しみや、開放感を味わう心地よさ、息抜きの大切さ、ひとりではないと思える心を、作品を通じて伝えたいと思っている。そして「あなたの中に何が見えたか、芽生えたか」という思いと共に、作品が内面的な対話・探求・共有・互いの新しい物語がはじまるきっかけになることを願いつつ描いている。